AX-DX

2026.6.25

refresh

2026.6.25

エンジニア採用が難しい企業向け。社内メンバーをIT化する施策

こんにちは。編集部のWebエンジニア渡辺です。

私は旅行が大好きで、よく長期の休みを利用して見知らぬ土地へ一人旅に出かけます。

見知らぬ街を歩くとき、最初はどこに何があるのか全くわからず、迷子になってしまうことも少なくありません。

しかし、何度か同じ道を歩いたり、地元の人に道を聞いたりしているうちに、少しずつその街の構造が理解できるようになり、やがて地図がなくても自由に歩き回れるようになります。

実は、企業におけるIT人材の育成も、この見知らぬ街を探索する感覚にとてもよく似ていると思います。

最初は専門用語という見知らぬ景色に戸惑うかもしれませんが、少しずつ知識を身につけ、経験を重ねることで、社内のメンバーが立派なIT人材へと成長していく様子を何度も見てきました。

現在、多くの企業でエンジニアの採用が非常に難しい状況が続いています。

求人を出してもなかなか応募が来ない、あるいは採用できても自社の文化に合わずすぐに辞めてしまう、といった悩みを抱えている人事担当者の方や経営者の方も多いのではないでしょうか。

外部からの採用が難しいのであれば、社内に目を向けて、既存のメンバーをIT人材として育てていくという選択肢をご提案したいと思います。

本記事では、エンジニア採用の現状を紐解きながら、社内メンバーをIT化するための具体的な施策や、成功させるためのポイントについて詳しくご紹介していきますね。

明日からすぐに取り入れられるノウハウを詰め込みましたので、ぜひ最後までお付き合いいただき、社内育成に向けた前向きな一歩を踏み出すヒントにしていただければと思います。

では、今回の目次はこちらです!

エンジニア採用が年々難しくなっている背景とは

まずはじめに、なぜここまでエンジニアの採用が難しくなっているのか、その背景について確認してみましょう。

単に人が足りないというだけでなく、社会全体の構造的な問題が絡み合っている状況があります。

IT人材不足の現状と将来予測

現在の日本において、IT人材の不足は深刻な社会問題となっています。

経済産業省の調査データや関連機関のレポートなどでも、IT需要が拡大し続ける一方で、それに見合うだけの人材供給が追いついていないことが繰り返し指摘されていますね。

将来的にもこの傾向は続くと推測されており、数年後、数十年後には数十万人規模でIT人材が不足するのではないかという見方もあります。

IT人材とは、プログラミングなどの技術的なスキルを持つだけでなく、デジタル技術を活用してビジネスの課題を解決できる人材のことです。

あらゆる業界でデジタル化が進み、新しいサービスやシステムが次々と生み出される中で、それらを開発・運用できる人材の価値は高まるばかりです。

特に、地方の中小企業においては、都市部の大企業へと人材が流出してしまう傾向もあり、採用活動はより一層厳しい状況になっていると思います。

求人倍率も非常に高く、一人の優秀なエンジニアを複数の企業が取り合うような状況が続いています。

このような売り手市場の中では、知名度が低い企業や、資金力が豊富でない企業が、条件面だけで優秀なエンジニアを獲得するのは至難の業だと言えるでしょう。

求めるスキルと採用市場のミスマッチ

人材が不足していることに加えて、企業が求めるスキルと、採用市場にいる候補者が持つスキルとの間に大きなミスマッチが生じていることも、採用を難しくしている大きな要因です。

企業側は即戦力として、特定のプログラミング言語に精通していたり、最新のクラウド技術の経験が豊富であったりする人材を求めがちです。

しかし、技術の進化は非常に早く、ほんの数年前まで主流だった技術が、あっという間に古いものになってしまうことも珍しくありません。

そのため、企業がピンポイントで求める最新スキルを持った人材は市場にほんの一握りしかおらず、採用のハードルをさらに上げてしまっています。

また、技術的なスキルだけでなく、自社の業務内容や業界の慣習を理解し、現場の課題に寄り添ってシステムを改善できる人材が求められます。

外部から新しく入ってきたエンジニアが、自社の複雑な業務フローを短期間で深く理解するのは大変なことです。

技術力は高くても、現場の要望をうまく汲み取れず、結果として使いにくいシステムができてしまうといった失敗例もよく耳にします。

このように、技術面と業務理解面の両方で、企業が求める水準を最初から満たす人材を見つけることは、砂漠の中で一粒の砂金を探すような難しさがあると思います。

採用から社内育成へシフトするメリット

外部からの採用が難しい現状を踏まえると、視点を変えて、既存の社員をIT人材として育成する方向へシフトすることが、非常に現実的で効果的な選択肢になってきます。

ここでは、社内育成に取り組むことで得られる具体的なメリットについてご紹介していきますね。

採用コストの大幅な削減と費用対効果

社内育成に切り替える最大のメリットの一つは、採用にかかるコストを大幅に削減できる点にあります。

中途採用でエンジニアを一人獲得しようとすると、求人広告の掲載費や、人材紹介会社への成功報酬など、多額の費用が発生します。

さらに、採用担当者の人件費や、面接にかかる時間などの見えないコストもバカになりません。

苦労して採用したにもかかわらず、短期間で退職されてしまった場合の損失は計り知れないものがありますね。

一方で、社内育成の場合は、外部に支払う採用コストは発生しません。

もちろん、学習ツールの導入や外部研修の受講費用などは必要になりますが、採用コストに比べればかなり抑えられます。

また、育成にかかった費用は、その社員がITスキルを身につけて業務を効率化したり、新しい価値を生み出したりすることで、中長期的にしっかりと回収していくことができます。

すでに自社で働いている社員であれば、人柄や勤務態度もわかっているため、採用のミスマッチによる早期離職のリスクを低く抑えることができるのも大きな強みだと思います。

限られた予算を、不確実な外部採用に投資するよりも、確実な社内の人材育成に投資する方が、費用対効果の面で優れていると言えるのではないでしょうか。

自社の業務理解が深い人材をIT化する強み

もう一つの非常に強力なメリットは、自社の業務をすでに深く理解している人材にITスキルを掛け合わせることができる点です。

現場の課題を最もよく知っているのは、日々その業務に取り組んでいる現場のメンバー自身です。

「ここが手作業で時間がかかっている」「このデータ集計をもっと自動化できれば」といった、生きた課題感を彼らは持っています。

業務知識とは、その会社特有の仕事の進め方やルール、顧客対応のノウハウなどのことです。

外部から優秀なエンジニアを採用しても、この業務知識をゼロから身につけてもらうには膨大な時間がかかります。

しかし、社内のメンバーであれば、すでにその業務知識を備えています。

業務知識を持った社員がITスキルを身につけることで、「痒い所に手が届く」ような、本当に現場で役立つシステムやツールを自ら作り出すことができるようになります。

例えば、営業部門の社員がプログラミングの基礎を身につけ、日々の売上データを自動で集計する簡単なプログラムを作成するだけで、部署全体の残業時間を劇的に減らすことができるかもしれません。

ITと現場の橋渡し役となる人材が社内にいることで、外部のシステム開発会社に依頼する際にも、要件を正確に伝えることができ、より質の高いシステム構築につながると思います。

自社の文化や業務を知り尽くした人材こそが、最も強力なIT人材へと成長する可能性を秘めていると感じています。

社内メンバーをIT人材化するための準備とマインドセット

いざ社内育成を始めようと思っても、急に「明日からプログラミングの勉強をしてください」と指示するだけでは、うまくいきません。

旅行に出発する前に、行き先について調べたり、必要な荷物を準備したりするのと同じように、育成を成功させるための土台作りが非常に重要になります。

つづいて、育成を始める前の準備と、関係者が持つべきマインドセットについて確認してみましょう。

経営層と現場の認識合わせ

社内育成の取り組みにおいて、最も根幹となるのが経営層と現場のメンバーとの間での認識合わせです。

経営層が「これからはDXの時代だから、全員ITスキルを身につけるように」と号令をかけても、現場のメンバーがその目的を理解していなければ、ただの負担になってしまいます。

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、IT技術を活用してビジネスの仕組みや企業文化を変革することです。

経営層は、なぜ今、社内育成が必要なのか、IT人材を育成することで会社をどう変えていきたいのかというビジョンを、現場に対して丁寧に説明する必要があります。

「業務の効率化を進めて、残業を減らしたい」「新しいデジタルサービスを立ち上げて、売上の柱を作りたい」といった具体的な目的を共有することが大切です。

現場のメンバーも、ただ指示されたから勉強するのではなく、ITスキルを身につけることが自分自身のキャリアアップや、日々の業務の負担軽減につながるというメリットを腹落ちさせる必要があります。

育成の取り組みには時間がかかりますし、途中で挫折しそうになることもあるかもしれません。

そうした時に、経営層と現場が同じ目標に向かって進んでいるという共通認識があれば、困難を乗り越える大きな力になると思います。

定期的なミーティングの場を設けたり、社内報で育成の目的を発信したりするなど、丁寧なコミュニケーションを重ねていくことが求められますね。

育成対象者の選定基準と適性の見極め

社内育成を成功させるためには、誰を対象に育成を進めるかという選定も重要なポイントになります。

全員を一律に育成しようとすると、リソースが分散してしまい、十分な効果が得られない可能性があります。

まずは、特定の部門や少人数のグループを対象としたスモールスタートを切るのがおすすめです。

対象者を選ぶ際の基準として、現在の業務成績が優秀であるかどうかも大切ですが、それ以上に「新しいことを学ぶ意欲があるか」「変化を楽しめる柔軟性があるか」といったマインド面を重視すべきだと思います。

IT技術は日々進化しているため、一度知識を身につけたら終わりではなく、継続的に学習していく姿勢が不可欠です。

普段の業務の中で、「もっとこうすれば効率が良くなるのではないか」と自発的に提案してくれるような社員は、IT人材としての適性が高い傾向にあります。

また、論理的に物事を考えることが得意な社員や、細かい作業をコツコツと続けることが苦にならない社員も、プログラミングなどの技術的な学習に向いていると思います。

適性を見極めるための明確な正解はありませんが、面談を通じて本人のキャリアの希望を聞き出したり、簡単なITに関する適性テストを実施したりするのも一つの方法です。

本人の意欲を第一に尊重し、「やってみたい」という手を挙げた社員から優先的に育成の機会を提供していくことが、良い結果を生む土壌になると感じています。

実践型社内育成を成功させる具体的な育成プランの作り方

準備が整ったら、いよいよ具体的な育成の計画を立てていきます。

旅行でも、行き当たりばったりで行くのも楽しいですが、限られた時間で多くの場所を回るためには、しっかりとした旅程表が必要です。

限られた業務時間の中で効果的に学習を進めるためのプランの作り方をご紹介していきますね。

必要なITスキルの棚卸しと目標設定

育成プランを作る上で最初に行うべきことは、自社が現在必要としているITスキルの棚卸しと、到達目標の明確な設定です。

一口にITスキルと言っても、プログラミング言語の習得から、データ分析、クラウドサーバーの構築、デザインツールの操作まで、その範囲は多岐にわたります。

自社の課題を解決するために、どのスキルが最も優先度が高いのかを絞り込む作業が必要です。

例えば、「社内の紙の書類を電子化してペーパーレス化を進めたい」という課題であれば、高度なプログラミング言語よりも、ノーコードツールやRPAといった業務自動化ツールの使い方を学習する方が即効性があります。

ノーコードツールとは、プログラミングの専門知識がなくても、画面上の操作だけでアプリケーションやシステムを作ることができるツールのことです。

必要なスキルが明確になったら、次は「半年後に、自分の部署の経費精算フローを自動化するアプリを完成させる」といった、具体的で測定可能な目標を設定します。

「ITに強くなる」といった曖昧な目標では、学習のゴールが見えず、モチベーションを維持するのが難しくなります。

目標は、高すぎず低すぎない、少し背伸びをすれば届くレベルに設定するのが良いと思います。

達成感を味わえるようなマイルストーンを細かく設定し、一つずつクリアしていくことで、着実にスキルを身につけていくことができます。

育成の初期段階では、現場の業務に直結するような小さなツールの作成などを目標にすると、学習の成果が目に見えやすく、周囲の理解も得やすいという利点があります。

業務と学習を両立させるスケジュールの組み方

社内育成において多くの企業が課題を抱えるのが、日々の通常業務と学習時間の両立です。

「空いた時間に勉強しておいて」という指示では、日々の忙しさに追われて学習が後回しになり、結局何も進まないという結果に陥りがちです。

業務時間内に学習のための時間をしっかりと確保し、それをスケジュールとして明確に組み込むことが非常に重要です。

例えば、「毎週火曜日と木曜日の午後は、2時間を学習時間として確保する」といったルールを部署内で共有し、その時間は通常業務から離れられる環境を作ります。

周囲のメンバーにも学習の目的と時間を共有し、「この時間は質問や電話の取り次ぎを控える」といった協力体制を築くことが不可欠です。

学習時間の確保は会社としての投資であるという認識を、経営層から現場の管理職まで徹底する必要があります。

また、スケジュールは詰め込みすぎず、余裕を持たせることも大切です。

学習を進める中で、想定より理解に時間がかかったり、急なトラブル対応で学習時間が削られたりすることは多々あります。

旅行の計画でも、スケジュールを詰め込みすぎると疲れてしまい、楽しむ余裕がなくなってしまいますよね。

月に一度は学習の進捗を振り返り、遅れがあれば計画を修正するバッファの時間を設けておくと、無理なく継続できると思います。

業務と学習のバランスを保ちながら、長期的な視点でじっくりと育てていく姿勢が求められますね。

現場の負担を減らす効果的な学習ツールと活用法

社内育成を進める際、教える側となる社内の先輩社員や技術者の負担が大きくなりすぎてしまうのも避けたいところです。

便利なツールを上手に活用することで、教える側の負担を減らしつつ、学習の質を高めることができます。

それでは、どのようなツールがあり、どう活用すればよいのかをご紹介していきますね。

オンライン学習プラットフォームの活用

基礎的な知識の習得には、オンライン学習プラットフォームの活用が非常に効果的です。

インターネット上には、プログラミングの基礎から最新のIT技術まで、動画やテキストで学べる良質な教材が数多く提供されています。

こうしたプラットフォームを利用する最大のメリットは、学習者が自分のペースで、いつでもどこでも学習を進められる点です。

一律の集合研修のように、理解が早い人が退屈したり、理解が遅い人が置いていかれたりすることがありません。

何度も動画を巻き戻して確認したり、実際に手を動かしながら学習を進めたりできるため、理解度の向上にもつながります。

また、多くのプラットフォームでは、学習の進捗状況を管理する機能が備わっています。

人事担当者や管理職は、誰がどこまで学習を進めているのか、どこでつまずいているのかをデータとして把握することができます。

これにより、進捗が遅れている社員に対して適切なタイミングで声をかけたり、サポートを行ったりすることが可能になります。

社内の技術者が一から資料を作成して講義を行うのは大変な労力がかかりますが、基礎学習をオンライン教材に任せることで、社内のリソースをより高度な指導や実務への応用サポートに集中させることができると思います。

まずは広く浅く基礎知識を身につけさせるための最初の入り口として、オンライン教材は最適な選択肢の一つです。

外部メンターや研修サービスの導入

オンライン教材で基礎を学んだ後、実際の業務に知識を応用していく段階になると、教材だけでは解決できない疑問や壁にぶつかることが多くなります。

社内に質問できる経験豊富なエンジニアがいれば良いですが、そうでない企業も多いと思います。

そうした状況でおすすめしたいのが、外部のメンター制度や専門的な研修サービスの導入です。

メンターとは、専門的な知識や経験を持ち、学習者の相談に乗ったり指導を行ったりする人のことです。

オンラインで現役のエンジニアに質問や相談ができるサービスを活用すれば、学習者は疑問をすぐに解消でき、学習のスピードを落とさずに済みます。

「このエラーがどうしても直らない」「こういう機能を作りたいが、どの技術を使えばいいか」といった具体的な悩みに、プロの視点から的確なアドバイスをもらえるのは非常に心強いものです。

外部の専門家と関わることは、最新の技術動向や業界の標準的な考え方に触れる良い機会にもなります。

また、自社の業務課題に直結したオリジナルの研修プログラムを外部の研修会社に依頼して構築するのも有効な手段です。

一般的な知識の習得だけでなく、「自社のシステムをどう改修するか」といった実践的なテーマで研修を行うことで、学習と業務の直結度が高まります。

外部の力を適切に借りることで、社内の負担を最小限に抑えつつ、質の高いIT人材を効率的に育成する環境を整えることができると感じています。

育成中のモチベーションを維持するためのフォローアップ術

ITスキルの学習は、時に孤独で、根気のいる作業の連続です。

書いたコードが思い通りに動かないエラー画面を見続けると、自分には向いていないのではないかと心が折れそうになることもあります。

途中で挫折させないための、周囲からの手厚いフォローアップが成功の重要なポイントになります。

定期的な面談と進捗の確認

学習者のモチベーションを維持するために欠かせないのが、上司や担当者との定期的な面談です。

「学習の進み具合はどう?」と立ち話程度に聞くのではなく、月に1〜2回程度、まとまった時間をとって1対1でじっくりと話を聞く場を設けることが大切です。

面談では、単に学習の進捗状況を確認するだけでなく、現在抱えている悩みや不安に耳を傾けることが主な目的となります。

「業務が忙しくて学習時間が確保できていない」「今の教材のレベルが難しすぎる」といった率直な意見を引き出し、一緒に解決策を考えていきます。

もし業務との両立に苦しんでいるようであれば、業務量の調整を周囲に働きかけるなどのサポートが必要になります。

また、面談の場を利用して、学習した内容を口頭で説明してもらうのも理解度を確認する良い方法です。

他人に説明することで、自分の理解が曖昧だった部分に気づき、知識の定着を促す効果があります。

面談を通じて、「会社はあなたの成長をしっかりと見守り、応援している」というメッセージを伝え続けることが、学習者の孤独感を和らげ、前向きな気持ちを保つための大きな支えになると思います。

私も後輩の相談に乗る際は、技術的な正解を教えるだけでなく、まずは彼らの頑張りを認める言葉をかけるように意識しています。

小さな成功体験を積ませる工夫

学習の意欲を持続させるためのもう一つの強力な方法は、小さな成功体験をたくさん積ませることです。

巨大で複雑なシステムを完成させるという遠い目標だけを見ていると、途中で息切れしてしまいます。

旅行で例えるなら、長い道のりを歩き続ける中で、途中の景色が綺麗な休憩所に立ち寄ったり、美味しい名物料理を食べたりするような、細かな達成感や喜びが必要です。

学習の過程において、「この短いプログラムが意図した通りに動いた」「画面に文字を表示できた」といった、些細なことでも構わないので、できたという実感を味わえる機会を意図的に作ります。

例えば、最初はExcelの簡単なマクロを組んで、毎日の日報作成の時間を5分短縮するといった、身近な業務の改善から始めるのが良いと思います。

マクロとは、複数の操作手順を記録して、自動的に実行させる機能のことです。

自分が書いたプログラムによって、自分や周囲のメンバーの仕事が楽になるという体験は、何よりも強いモチベーションの源泉になります。

小さな成果が出た時には、部署内の朝礼や社内チャットツールなどで、その取り組みを周囲に共有し、称賛する文化を作ることも効果的です。

周りから認められることで自信がつき、さらに難しい課題に挑戦してみようという意欲が湧いてきます。

小さな成功を積み重ねる階段を用意してあげることが、育成を軌道に乗せるための秘訣だと感じています。

育成したIT人材の定着率を高める評価とキャリアパス

社内育成が順調に進み、無事にITスキルを身につけたとしても、それで終わりではありません。

せっかく成長した人材が、自社での将来に希望を持てず、好条件の他社へ転職してしまうという事態は避けなければなりません。

育成した人材を社内に定着させ、長く活躍してもらうための仕組みづくりについて確認してみましょう。

スキルアップを正当に評価する制度設計

社員が努力してITスキルを身につけ、業務の効率化や新しい価値の創出に貢献した場合、それを人事評価として正当に報いる制度が必要です。

「ITスキルを身につけて仕事は増えたが、給与や評価は今までと変わらない」という状態では、不満が溜まり、いずれ組織を離れていく原因になります。

例えば、特定のIT資格の取得に対して報奨金や資格手当を支給する制度を設けたり、ITスキルを活用した業務改善の成果を評価項目に組み込んだりといった工夫が考えられます。

評価制度とは、社員の能力や会社への貢献度を測り、給与や昇進に反映させる仕組みのことです。

単に技術力があることだけでなく、その技術を使ってどれだけ現場の課題を解決し、会社の利益に貢献したかという結果の部分をしっかりと評価することが重要です。

また、育成期間中は目に見える成果が出にくいこともあるため、学習に対する意欲や、取り組みのプロセス自体を評価する指標を設けることも検討すべきだと思います。

公平で納得感のある評価制度があることで、社員は「会社は自分の成長と貢献を正しく見てくれている」と安心し、さらにスキルを磨こうというモチベーションを維持することができます。

評価基準を明確にし、透明性の高い運用を行うことが、人材の定着率を高めるための基盤となりますね。

長期的なキャリアビジョンの提示

評価制度と並んで重要なのが、IT人材としての長期的なキャリアビジョンを会社として提示することです。

「このままスキルを磨き続ければ、将来自社でどのようなポジションに就き、どのような活躍ができるのか」という道筋を見せる必要があります。

従来の組織体制のままでは、IT人材の専門性を活かせる適切なポジションが存在しないケースも少なくありません。

IT戦略を推進する専門部署を新設したり、DXを推進するプロジェクトのリーダーに抜擢したりするなど、彼らが能力を存分に発揮できる活躍の場を用意することが求められます。

また、マネジメント職へと進む道だけでなく、技術のスペシャリストとして専門性を極めていく道など、複数のキャリアの選択肢を用意できるとより理想的です。

定期的な面談の中で、会社が期待する役割と、本人が思い描くキャリアの希望をすり合わせ、実現に向けたサポートを行っていくことが大切です。

自分自身の成長が会社の成長とリンクしており、自社で働き続けることで理想のキャリアに近づけるという実感を持ってもらうことが、定着率向上の最大のポイントだと思います。

私自身も、技術を追求することの面白さを理解してくれる環境があるからこそ、長く今の仕事を続けてこられたのだと感じています。

社内メンバーのIT化は、決して簡単な取り組みではありませんが、自社の業務を愛する社員が強力なITの武器を手に入れた時、企業は劇的な成長を遂げる可能性を秘めています。

少しずつ準備を整え、現場のメンバーと対話を重ねながら、自社に合った育成の形を見つけていっていただければと思います。

渡辺 瑠香

日本全国を旅するWebエンジニア。旅行やお出かけなど、その地域ならではの楽しくてわくわくする情報を発信しています。

このライターの記事一覧